セックスレスから別居へ|離婚を考えた妻と夫婦関係を立て直した事例
結婚生活が長くなると、子育てや仕事に追われ、夫婦だけで過ごす時間が少なくなることがあります。
今回ご紹介するFさんご夫婦も、お子さんが生まれてから生活の中心が子育てへと変わり、夫婦だけの時間が少なくなっていました。
出産後、約4年間にわたって夫婦の営みがない状態が続いていましたが、Fさんは「子育てが落ち着けば、また自然に戻るだろう」と考えていました。
一方、妻のEさんは、その状態を長く我慢していたわけではありません。
「女性として見てもらえていない」
「自分の気持ちを分かってもらえない」
という寂しさを抱え、夫婦として一緒に暮らすことにも苦痛を感じるようになっていました。
やがてEさんから別居を切り出され、離婚についても具体的に話し合われるようになります。
一度は夫婦として暮らし続けることが難しい状態になったFさんご夫婦が、どのような経過をたどって再び一緒に暮らすようになったのか。
セックスレスだけでは説明できなかった夫婦のすれ違いと、その後の関係の変化をご紹介します。
出産後の生活で、夫婦だけの時間がなくなっていった
Fさんご夫婦は結婚7年目。
お子さんが生まれてからは、夫婦ともに子育てを中心とした生活を送っていました。
外から見ると穏やかな家庭でしたが、二人だけで話す時間は少しずつ減っていました。
子どもの世話や家のことが優先され、夫婦でゆっくり過ごす時間もほとんどありません。
出産後は約4年間、夫婦の営みもない状態が続いていました。
Fさんは、それを深刻な問題だとは考えていませんでした。
「今は子育てが大変だから仕方がない」
「子どもが大きくなれば、また元に戻る」
と考えていたからです。
しかし、Eさんの受け止め方は違っていました。
夫婦として触れ合うことがなくなったことだけではなく、普段の会話や思いやりまで減っているように感じていたのです。
Fさんにとっては「忙しい時期」でした。
Eさんにとっては、「夫婦として見てもらえなくなった」と感じる時間が何年も続いていました。
この違いに二人が気付かないまま、夫婦の距離は広がっていきました。
妻から突然、別居と離婚を切り出された
ある日、EさんはFさんに静かな口調で話しました。
「もう一緒に暮らすのが苦痛です」
「別居して、このまま離婚したいと思っています」
Fさんにとっては突然の話でした。
「そんなはずはない」
「そこまで言われる理由が分からない」
と反論してしまいます。
Fさんは、夫婦として普通に生活してきたつもりでした。
そのため、妻がそこまで思い詰めていたことを理解できませんでした。
しかしEさんにとっては、その日突然に離婚を考えたわけではありません。
それまでの生活の中で感じていた寂しさや不満が積み重なり、「このまま夫婦として暮らすことは難しい」と考えるまでになっていました。
数日後には妻の両親を交えた話し合いも行われました。
そこでEさんは、
- セックスレスが長く続いていること
- 性格が合わないと感じていること
- これ以上結婚生活を続ける意思がないこと
を伝えました。
養育費や財産分与についても話題になり、夫婦の問題は単なる夫婦喧嘩では済まない段階に進んでいました。
セックスレスだけが妻を苦しめていたわけではなかった
Fさんからご相談を受け、これまでの夫婦生活について詳しく伺いました。
そこで見えてきたのは、Eさんが苦しんでいたのはセックスレスそのものだけではないということでした。
お子さんが生まれてから、生活は子育て中心になりました。
Eさんは育児を一人で抱えているような孤独を感じることがあり、Fさんに気持ちを分かってもらえないと感じる場面も増えていました。
夫婦の会話が少なくなり、思いやりを感じる機会も減っています。
Eさんが不満を伝えても、Fさんから十分に受け止めてもらえないと感じることもありました。
そうした状態が続いたことで、
「私は夫にとって妻ではなく、子どもの母親になっただけなのではないか」
という寂しさにつながっていました。
Fさんは「セックスレスをどうすれば解消できるか」と考えていましたが、Eさんが求めていたものは、それだけではありませんでした。
自分の気持ちを聞いてほしい。
夫婦として向き合ってほしい。
一緒にいる時間を安心して過ごしたい。
その部分が満たされないまま、夫婦の営みだけを戻そうとしても、Eさんの気持ちは動きませんでした。
別居直後は、妻の気持ちは変わらなかった
別居後も、Eさんの態度は厳しいものでした。
「自由になりたい」
「いつ離婚してくれるの」
といった言葉をFさんに伝えていました。
Fさんは妻の気持ちを変えようとして、何度も話し合いたいと思っていました。
しかし、Eさんはすでに夫婦生活そのものに疲れている状態です。
ここでFさんが自分の気持ちだけを伝え続けると、Eさんには再び説得されているように感じられてしまいます。
そこで、連絡の仕方を見直しました。
何度も答えを求めることをやめ、Eさんが話すときには途中で反論せずに聞く。
自分の考えを説明する前に、妻が何を感じていたのかを聞く。
これまでなら言い返していた場面でも、一度受け止めてから話す。
Fさんにとっては、それまで当たり前だった夫婦の会話の仕方を変えることでした。
子どもとの面会が、夫婦の新しい接点になった
別居後も、二人にはお子さんを通じた接点がありました。
子どもの行事や週末の面会などをきっかけに、FさんとEさんが顔を合わせる機会が生まれます。
最初から夫婦らしい会話ができたわけではありません。
それでも、子どもの話をする中で、少しずつ短い会話ができるようになりました。
Fさんは、妻との関係をすぐに元へ戻そうとするのではなく、まず目の前にいるお子さんとの時間をきちんと過ごすことを意識しました。
妻に何かを求めるためではなく、父親として子どもと向き合う。
Eさんへの対応についても、言葉だけで「変わる」と伝えるのではなく、実際の行動で示すようにしました。
妻の負担を考えて行動する。
会ったときには妻の話を聞く。
自分の不満をぶつけない。
そうした対応が続くにつれて、Eさんの警戒した様子も少しずつ変わっていきました。
妻と話せる時間が少しずつ増えていった
その後、子どもを交えた外出や週末の一時帰宅など、二人が一緒に過ごす時間が増えていきました。
以前なら、少し話しただけで夫婦喧嘩になっていた二人です。
しかし、Fさんが自分の意見を押し通そうとせず、Eさんの話を聞くようになったことで、会話の雰囲気が変わっていきました。
ここでも、セックスレスについて結論を出そうとはしませんでした。
「いつ夫婦の営みを再開するのか」
「夫婦として戻るのか」
という話を急ぐのではなく、まず二人で普通に話せる状態を作っていきました。
Eさんにとっても、Fさんと話をすると必ず離婚の説得をされる、という状態ではなくなっていきます。
少しずつ、以前とは違う形で夫婦の時間が戻っていきました。
離婚の話をする時間が減り、再び一緒に暮らすようになった
夫婦で過ごす時間が増えるにつれて、Eさんの態度にも変化が見られるようになりました。
別居当初は離婚の話が中心でしたが、次第に子どものことや日常の出来事について自然に話せるようになりました。
週末に一緒に過ごすことにも大きな抵抗を示さなくなっていきます。
Fさんは、この頃になって初めて、妻が何年も感じていた寂しさについて少しずつ理解できるようになりました。
「自分は普通に暮らしていたつもりだった」
という認識と、
「妻はずっと孤独を感じていた」
という現実には、大きな違いがありました。
その違いを知ったことで、Fさんの妻への接し方も変わっていきました。
やがてEさんは離婚の意思を撤回し、夫婦としてもう一度生活していくことを選びました。
その後、二人は別居を解消して同居を再開しました。
この事例でセックスレスの背景にあった夫婦の問題
Fさんご夫婦の場合、4年間のセックスレスだけを解消すれば関係が戻るという状況ではありませんでした。
背景には、
- 子育てを中心とした生活で夫婦の時間が減っていた
- 妻が育児の孤独を感じていた
- 日常の会話が少なくなっていた
- 妻の不満を夫が十分に受け止められていなかった
- 夫婦として向き合う時間がなくなっていた
という複数の問題がありました。
Eさんにとってセックスレスは、夫婦の営みがないという事実だけではありませんでした。
「自分は妻として見てもらえているのか」という気持ちにもつながっていたのです。
そのためFさんは、夫婦の営みを取り戻すことを急ぐのではなく、まず夫婦として話せる関係を作ることから始めました。
別居から再同居までに起きた変化
このご夫婦の経過を振り返ると、次のような流れになります。
出産後
子育て中心の生活になり、夫婦だけの時間が減少。
セックスレスが長期化
約4年間、夫婦の営みがない状態が続く。
妻が離婚を考えるようになる
寂しさやコミュニケーション不足が積み重なり、夫婦生活そのものに疲れを感じる。
別居と離婚要求
妻から別居と離婚を切り出され、両親を交えた話し合いへ。
別居後の対応を変更
夫が妻を説得することより、妻の話を聞くことを意識。
子どもとの面会
子どもの行事や週末の面会を通じて、夫婦が会う機会が増える。
夫婦の会話が戻る
子どもを交えた外出や一時帰宅などを通じて、二人で過ごす時間が増える。
離婚の話が減る
妻の態度が少しずつ変わり、日常的な会話ができるようになる。
再同居
妻が離婚の意思を撤回し、夫婦として再び一緒に暮らすことになる。
このケースでは、セックスレスの解消を先に目指したのではなく、夫婦として話せる関係を取り戻していく中で、二人の距離が変わっていきました。
セックスレスで夫婦関係が悪化したときに考えたいこと
セックスレスになると、夫側は「性生活の問題」と捉え、どうすれば夫婦の営みを再開できるかを考えがちです。
しかし、妻側が抱えている不満が、性生活だけとは限りません。
「話を聞いてくれない」
「育児の負担を分かってくれない」
「夫婦として見てもらえない」
「一緒にいても寂しい」
という気持ちが長く続いた結果として、夫婦の営みがなくなっているケースもあります。
Fさんご夫婦も、まさにそうしたケースでした。
そのため、Fさんは性生活について結論を急がず、妻が日々どのような気持ちで過ごしていたのかを知るところから始めました。
セックスレスになった時期だけを見るのではなく、その前後で夫婦の会話や生活がどう変化していたのかを見ることで、Eさんの気持ちを少しずつ理解できるようになったのです。
セックスレスと別居に至った夫婦のご相談について
セックスレスが長く続いていると、夫婦のどちらかが「もうこの関係を続けられない」と感じることがあります。
その背景には、性生活だけでなく、子育て、会話、家事、仕事、夫婦それぞれの孤独感などが重なっている場合もあります。
今回のFさんご夫婦も、別居を切り出された時点では、夫婦の関係を立て直すことが簡単な状態ではありませんでした。
だからこそ、Fさんは妻を説得することから離れ、妻が何を感じていたのかを知ることに時間を使いました。
セックスレスから別居になった夫婦について、これまでの経緯や相手の言葉を伺いながら、心理カウンセラーがご相談をお聞きしています。
よくあるご質問
- セックスレスだけが原因で妻から離婚を求められることはありますか?
- セックスレスそのものが大きな問題になる場合もあります。
ただ、長期間のセックスレスの背景に、夫婦の会話不足や孤独感、育児負担、夫婦としての距離などが重なっているケースもあります。
Fさんご夫婦も、性生活だけではなく、出産後の夫婦関係全体にすれ違いが生じていました。
- 妻から「一緒に暮らすのが苦痛」と言われた場合、どうすればいいですか?
- その言葉だけを聞いて、すぐに妻の気持ちを変えようとするのではなく、なぜそこまで苦痛を感じるようになったのかを考えることが必要です。
Fさんの場合も、最初は妻の言葉に反論していました。
その後、妻の話を聞くことを意識するようになり、これまで見えていなかった夫婦間の問題に気付いていきました。
- 別居後、子どもとの面会が夫婦関係の変化につながることはありますか?
- 子どもとの面会が夫婦の接点になるケースはあります。
ただし、面会を妻との関係を戻すための手段として利用するのではなく、まず子どもとの時間を大切にすることが前提になります。
Fさんの場合も、子どもとの行事や週末の面会を通じて、妻と自然に話す機会が少しずつ増えていきました。
- セックスレスになった妻に、夫婦の営みを求め続けてもいいですか?
- 妻が夫婦の営みそのものに強い抵抗を感じている時期には、何度も求めることでさらに距離が広がることがあります。
Fさんご夫婦では、性生活の再開を急がず、まず夫婦として落ち着いて話せる関係を作ることを優先しました。
- 別居した妻が「離婚したい」と言っていても、夫婦で話せるようになることはありますか?
- Fさんご夫婦では、別居当初、妻は離婚の意思を明確にしていました。
その後、子どもとの面会や週末の時間を重ねる中で、少しずつ会話が戻り、最終的に再同居することになりました。
ただし、同じような言葉を妻から言われた場合でも、夫婦によって背景は異なります。別居に至った経緯や、妻がそれまでに何を感じていたのかによって、その後の関係も変わります。
